CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは
CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは
2021-08-10
加藤 章太朗
加藤 章太朗
カーボンニュートラル
カーボンニュートラル経営
脱炭素経営

2020年10月、地球環境問題、そして日本のエネルギー戦略に大きな影響を与える動きがありました。第203回臨時国会にて、菅内閣総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したのです。

本記事では、2050年に達成しようとしているカーボンニュートラルとは何か?そして、なぜ今日本を始めとした世界各国がカーボンニュートラルに向けて歩みを始めているのかを解説します。

<目次>

・カーボンニュートラルとは

・なぜ今カーボンニュートラルか

・カーボンニュートラルに求められるCO₂削減量とは

・日本のカーボンニュートラル実現に必要なこと

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素を始めとする温室効果ガス(GHG)の排出量から吸収量を引いて差し引きゼロにすることを言います。温室効果ガスの排出をゼロにすることは難しいため、CO₂の分離・回収技術や森林、海洋を利用して、温室効果ガスが大気中に増えない状態を目指すこととなります。

カーボンニュートラルを実現するためには、数々のチャレンジが必要ですが、すべきことはシンプルに以下の2つです。

1.CO₂の排出量を減らす、ためには、化石燃料によって行われている発電を再生可能エネルギーによる発電に転換したり、更なる省エネルギーが必要です。

2.CO₂を回収する、については、CCU(carbon dioxide capture & Utilization)やCCS(carbon dioxide capture & storage)といった技術を発展させ、活用する必要があります。

CCUの例を挙げると、化石燃料を燃焼した際に出るガスからCO₂だけを分離・回収し、水素と合成することでメタノールを製造し、燃料や化学品にするといったケースがあります。

CCSは、分離・回収したCO₂を地中や海底に埋める技術です。

これらの技術に関する課題はコストです。CO₂の分離・回収・貯蔵を如何に低コストで行えるか?が今後の技術開発で求められることとなります。

なぜ今カーボンニュートラルか

カーボンニュートラルを実現する方向性は2つとシンプルですが、例えばCCUやCCSといった技術を使っても、CO₂を回収するにしてもコストがかかることは想像できると思います。「コストをかけてまでなぜカーボンニュートラルを達成しなければならないのか。」「日本だけが政治の都合で表明しているものではないのか。」など様々な意見があるかと思います。

それでも、日本がカーボンニュートラルの実現を目指すべき理由は以下です。


1.地球温暖化の予測シナリオが深刻なため

2.国際社会において責任が問われるため

3.地球温暖化への対策の有無が、国や企業の競争力に影響をし始めるため

1つずつ見ていきましょう。

1.地球温暖化の予測シナリオが深刻なため

Global Carbon Budget 2020によると、2010年から2019年の平均で年間で約18.7Gt(187憶トン)のCO₂が大気中に残ります。

内訳は以下です。

①化石燃料を起源としたCO₂排出量:+ 約34.5Gt

②土地利用の変化によるCO₂排出量(*):+ 約5.9Gt

③陸域によるCO₂の吸収量:- 約12.5Gt

④海洋によるCO₂の吸収量: - 約9.2Gt

(*)森林の伐採など、土地の利用の変化によるCO₂排出への影響のこと。

① + ② - (③ + ④) = 大気中に残るCO₂ = 18.7Gt

大気中に残るCO₂ / 年
Global Carbon Budget 2020より引用

18世紀の産業革命以降、人間の化石燃料の利用や土地利用によって大気中に大量のCO₂が排出され、陸や海によるCO₂の吸収量を上回るようになりました。現在では、上の図が示すように、年間で18.7Gt(180憶トン)ものCO₂が大気中に増えるバランスとなってます。

このような人為的なCO₂の排出が原因となり、大気中のCO₂濃度は年々上昇しています。以下の図は大気中のCO₂濃度の推移を示していますが、現在は約410ppmというCO₂濃度です。これは、大気に存在する分子100万個の中に410個のCO₂分子が存在するという意味です。

大気中のCO₂濃度
Global Monitoring Laboratoryより引用

大気中にたった0.04%しか含まれていないとはいえ、CO₂は温室効果を持つガスです。CO₂濃度が上昇した結果、以下の図が示すように産業革命以前と比べ地球の温度は1.1度上昇し、様々な気候の変動が起こりつつあります。

世界の気温変化
NASAより引用

2018年に公表されたIPCC1.5°C評価報告書では「CO₂を含むGHGに対する対策がなされず現在の度合いで地球温暖化が進めば、2030年から2052年の間に気温上昇が1.5度に到達する可能性が高い」という見解が公表されました。

2.国際社会において責任が問われるため

この状況を受け、2015年にパリで開催された国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)で、パリ協定が採択されました。パリ協定は全国連加盟国によって合意され、以下が決まりました。

・地球の気温上昇を、産業革命前と比較して2度より十分低く抑え、1.5度未満に抑えるよう努力する

・全ての国が温室効果ガスの排出削減目標を「国が決定する貢献(NDC)」として5年毎に提出・更新する

なお、IPCC1.5°C評価報告書では、産業革命前と比べ気温上昇を1.5度に抑えるためには、2010年を基準として2030年までにCO₂排出量を45%減少させ、2050年前後に正味ゼロにする必要があると報告されています。

これらを受け、各国が掲げた目標は以下です。

各国のGHG削減目標
外務省HPより


※アメリカは、2019年にトランプ大統領がパリ協定の脱退を表明しましたが、2021年バイデン大統領に交代後、正式に復帰しています。

このように国連加盟国が産業革命前と比べ、全世界の気温上昇を1.5~2度に抑えるという目標を持って行動することになりました。そして、そのためには2050年までにカーボンニュートラルを実現する必要があり、菅総理が2020年10月にカーボンニュートラルを目指すことを表明したのです。

3.地球温暖化への対策の有無が、国や企業の競争力に影響をし始めるため

地球温暖化への取り組みはSDGsにも含まれています。SDGsとは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のこと。SDGsには17の目標がありますが、そのうちの「7.エネルギーをみんなにそしてグリーンに」「13.気候変動に具体的な対策を」などが主に地球温暖化問題に関連しています。

SDGs17の目標
国連広報センターより引用

SDGsは一般消費者にも認知されるようになってきており、サービスを提供している企業のSDGsへの取り組みは消費者からも注目されるようになっています。

また、現在ESG投資への注目度が上がっています。ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資のこと。

機関投資家の投資の意思決定プロセスに、ESG(E=Environment、S=Social、G=Governance)課題を反映させるべきとした国際的なガイドライン(責任投資原則= PRI)が2006年、国連によって定められました。

財務情報に加え、財務以外のESGに関する情報を合わせて投資の決定をするというものです。

2018年にESG投資の残高は30兆ドルとなり、2014年から70%拡大しました(*)。これは、世界全体の投資残高の3割と言われています。

(*)ESG投資を巡る課題より(早稲田大学 経営管理研究科 教授 根本直子)

このように、地球温暖化への対策は投資家の資金を呼び込む上でも重要なファクターとなっており、カーボンニュートラルを始め脱炭素への取り組みは、企業や国の競争力につながると言えます。

カーボンニュートラルに求められるCO₂削減量とは

日本は現在年間で約12億トンのCO₂を排出しており、全世界の排出量の約3%となります。CO₂排出量12億トンのうち、93%がエネルギー起源の排出、7%が非エネルギー起源の排出です。

日本のCO₂排出元の分類
国立環境研究所 日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2019年度)確報値より引用

エネルギー起源のCO₂とは、燃料の燃焼によって発生するCO₂です。

非エネルギー起源のCO₂は、セメントの生産時に起こる化学反応など燃料の燃焼以外によって発生するCO₂です。

大幅にCO₂を削減するためには、エネルギー起源のCO₂排出量を扱わなければなりません。

そして、更に細かくCO₂排出元を見ていきます。

CO₂排出元を分析するために、以下の2つの考え方があり、双方から数値を見る必要があります。

①電気・熱配分前排出量

CO₂の排出量を、電力や熱の生産者からの排出として計算する考え方。

例えば、企業が日々オフィスでエアコンを使っています。火力発電で作られた電気を使っているとすれば、電気を作る際にCO₂が発生します。

電気・熱配分前排出量は、生産者からの排出としてカウントするので、発電所がCO₂を排出しているとカウントします。

この場合、電力会社はCO₂を発生させ、利益を上げているので、CO₂の排出元とカウントされるのも合理的かもしれません。

なお、昨今世の中に増えてきた電気自動車は、動力となる電気が化石燃料を燃焼させて作られていてはCO₂削減につながりません。

火力発電所で発電された電気で電気自動車を充電し使っても、CO₂削減にならないのです。

つまり、いくら消費者が環境に良いことをしようとしても、電力や熱を生産する主体が努力をしなければ、CO₂削減は実現しないとも言えます。

電気や熱の生産時に発生するCO₂の削減を目指す意味でも、電気・熱配分前排出量を可視化することには大きな意味があります。

電気・熱配分前排出量で分析した場合のCO₂排出量の内訳は以下です。

2018年の電気・熱配分前のCO₂排出量
「経済産業省 2018年度温室効果ガス排出量分析(CO₂全体)」より

※エネルギー転換部門は発電所など電力や熱を生産し、販売している主体を表しています。

②電気・熱配分後排出量

CO₂の排出量を、電力や熱の消費量に応じて各部門に配分した後の値。

例えば、家庭では日々電気を使っています。火力発電で作られた電気を使っているとすれば、電気を作る際にCO₂が発生します。

電気・熱配分後排出量は、消費者からの排出としてカウントするので、この場合は家庭がCO₂を排出しているとカウントします。

電気・熱配分後排出量とは逆の考え方になりますが、電気や熱の最終消費者がCO₂を排出しない再生可能エネルギーを求めれば、

生産者が再生可能エネルギーを生産するインセンティブになります。

CO₂の排出量は、電気や熱の生産者だけの努力によって下げるのではなく、企業や個人といった最終消費者の努力も必要です。

そういった意味でも、電気・熱配分後排出量を可視化することはとても重要です。

電気・熱配分後排出量で分析した場合のCO₂排出量の内訳は以下です。

2018年の電気・熱配分後のCO₂排出量
「経済産業省 2018年度温室効果ガス排出量分析(CO₂全体)」より

電気・熱配分前から考えると、電気や熱の生産者であるエネルギー転換部門の生産活動から大量のCO₂が排出されており、電力供給を再生可能エネルギーを始めとしたCO₂を排出しないエネルギー源に変えていく必要があると言えます。

一方で、電気・熱配分後から考えると、産業部門35.0%、業務その他部門17.2%、運輸部門13.5%(5%は家庭)、エネルギー転換部門5.6%を合計した71.3%が、企業の消費活動によって生まれているCO₂と言えます。電気や熱の供給者であるエネルギー転換部門が、再生可能エネルギーの生産努力をすると同時に、エネルギーの消費者としての企業が、でき得る限りCO₂を排出しない企業活動を取ることが求められています。

日本のカーボンニュートラル実現に必要なこと

2050年のカーボンニュートラルに向け、2020年12月に経済産業省より「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が発表されました。

その中で、カーボンニュートラル実現に向けた日本政府の意思を以下のように記載している。

  • 地球温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入。
  • 産業界は、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が多数存在し、民間の前向きなイノベーションへの挑戦を政府が全力で支援する。
  • 成長が期待される産業(14分野)において、高い目標を設定し、あらゆる施策を総動員する。

カーボンニュートラルの実現のポイントとなる技術は以下です。

  • 洋上風力などの再生エネルギー
  • 蓄電池
  • CO₂分離・回収(CCU、CCS、DACなど)
  • 水素発電
  • 原子力

それぞれの技術の現状や課題、事例についてはまた別の記事で詳しく紹介します。

以上、カーボンニュートラルの概要となります。世界各国、そして日本政府がカーボンニュートラルを目指している以上、多くの産業のビジネスモデルや戦略に影響が出るかと思います。今後、STAYMOVEでは各企業がこの流れに乗り遅れないよう、カーボンニュートラル社会に向けた様々な情報を発信していきます。

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