世界で広がるCO₂の分離・回収技術(CCU、CCS、CCUS、DAC)とは
世界で広がるCO₂の分離・回収技術(CCU、CCS、CCUS、DAC)とは
2021-08-27
加藤 章太朗
加藤 章太朗
CO₂分離・回収
CCU
CCS
CCUS
DAC

2050年にカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)を実現するためには、以下の2つが必要です。

  1. CO₂の排出量を減らす
  2. 排出されたCO₂を分離・回収する

今回は、2の「排出されたCO₂を分離・回収する技術(CCU、CCS、CCUS、DAC)」について解説します。

<目次>

・CO₂の分離・回収技術の分類

・なぜCO₂の分離・回収技術(CCU、CCS)が必要なのか

・必要なCO₂の分離・回収規模

・CO₂の分離・回収の市場規模

・CO₂の分離・回収の技術

・回収したCO₂の輸送

・CO₂の分離・回収の事例

CO₂の分離・回収技術の分類

CO₂の分離・回収技術には、以下のような呼び方があります。

1. Carbon dioxide Capture and Utilization(CCU)

CO₂を分離・回収し、化学品や燃料等に転換する技術のこと。

2. Carbon dioxide Capture and Storage(CCS)

CO₂を分離・回収し、地中や海底下に貯留する技術のこと。

3. Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(CCUS)

1、2を合わせた名称。

4. Direct Air Capture(DAC)

空気中のCO₂を直接回収する技術のこと。

それぞれの領域で様々な技術開発がなされていますが、いずれにしてもCO₂を分離・回収することには変わりません。

なぜCO₂の分離・回収技術(CCU、CCS)が必要なのか

CO₂の分離・回収(CCU、CCS)が求められているのは下記の理由です。

  • 2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロにしなければならない
  • とはいえ、供給が安定しない再生可能エネルギーで、すべての化石燃料を代替できない

「CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは」で解説したように、今世界各国が2050年までにCO₂を含むGHGの排出量を実質ゼロにすべく具体的な行動を始めています。

そして、日本も2020年10月に菅総理によって2050年までにGHGの排出量を実質ゼロにするという目標が発表されました。

地球環境を守るためというだけではなく、国際社会における責任を果たし、国や企業としての競争力を保つためにも、GHGの排出量実質ゼロは達成しなければならない目標です。

それでは、どのようにしてGHGの排出量を実質ゼロにすれば良いでしょうか。

まず、GHGの中でも最も地球温暖化への影響が大きいCO₂について、発生源を見ると日本においては93%がエネルギー起源となっています。

日本のCO₂排出元の分類国立環境研究所 
日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2019年度)確報値より引用

エネルギー起源のCO₂とは、燃料の燃焼によって発生するCO₂です。CO₂排出量を実質ゼロにするためには、エネルギー起源のCO₂に対処することが重要であるとわかります。仮に、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーですべてのエネルギー需要をまかなえれば、CO₂の93%を削減できるということになります。しかし、現状では現実的ではありません。

というのも、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、設備利用率が100%ではありません。太陽光発電は太陽が出ている間しか発電できず、夜の電力需要を補うことは難しいです。風力発電も風が吹いていない時間は発電できません。

なお、日本では、太陽光発電の設備利用率は約17%、風力発電の設備利用率は約27%と言われています(*)。


(*)令和2年度の調達価格等に関する意見(案)より

今後、水素による再生可能エネルギーの貯蔵などの蓄電技術が大きく発展するなどイノベーションが起きない限りは、再生可能エネルギーですべての電力需要をまかなうことはできないのです。

以上の理由から、2050年までの目標を達成するためには、化石燃料によって生じるCO₂を回収する必要があり、CO₂の分離・回収技術(CCU、CCS)が必要となります。

必要なCO₂の分離・回収規模

では、どのくらいのCO₂を分離・回収する必要があるでしょうか。

経済産業省が2020年12月に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」によると、電源構成の30~40%をCO₂の分離・回収とセットになった火力発電(*)と原子力発電でまかなう記載があります。

(*)排出されたCO₂を分離・回収して他の物質に転換することを前提とした火力発電のこと。

2030年の予測電源構成において、原子力発電は20~22%となっています。2050年の原子力発電の電源構成率は不明ですが、世論を考えると可能な限り依存度を下げていく方向性だと考えられます。

仮に原子力発電の構成比が2050年に10%になれば、CO₂の分離・回収とセットになる火力発電は20~30%となります。

2018年の日本のCO₂排出量は約11.4憶トンであり、93%の10.6憶トンがエネルギー起源のCO₂となります。

仮に2018年時点のCO₂排出量を基準にすると、電源構成比20~30%から生み出されるCO₂量は以下です。


10.6憶トン × 20~30% = 2.12憶トン ~ 3.18憶トン/年


つまり、これが2050年時点でCO₂を分離・回収すべき規模の概算となります。

CO₂の分離・回収の市場規模

分離・回収すべきCO₂の量とCO₂の分離・回収の単価をかければ、市場規模を概算可能です。

CO₂の分離回収の市場規模 = 分離・回収すべきCO₂の量 × CO₂の分離・回収の単価

CO₂の分離単価は、CO₂分離・回収技術ロードマップ(*)によると、2020年に2,000円台/トン、2030年に1,000円台/トン、との記載があります。

(*)「次世代火力発電の早期実現に向けた協議会(第2回会合)」より

かなり高い目標かもしれませんが、仮に2050年にCO₂の分離コストが1,000円/トンになったと仮定すると、2050年時点のCO₂分離・回収の市場規模は以下です。

日本のCO₂分離・回収市場 = 2.12憶トン~3.18憶トン × 1,000円 = 2,120憶円~3,180憶円

なお、CO₂は分離・回収しただけでは駄目で、そのCO₂を化学品や燃料に転換させたり、地中に貯留するためのコストが必要となります。発電所でCO₂を分離・回収したとしても、その付近にCO₂の貯留に最適な土地がなければ、CO₂を輸送しなければならず、輸送コストがかかります。

このようにCO₂の分離・回収は日本において一定以上の大きな市場となることが推測できます。

しかし、欧州などの世界各国と比べると、日本のCO₂の分離・回収への依存度は高いという指摘もあります。IEAのWorld Energy Outlook2019によれば、2050年時点でのCCUSによるCO₂削減量はわずか9%と予測されており、世界の将来的なCO₂の分離・回収の想定活用度は、日本が想定しているよりも低いということになります。

CO₂の分離・回収の技術

CO₂の分離・回収技術は、新しい技術ではなく、水素や天然ガス等に含まれるCO₂を分離する目的で使われてきました。

しかしながら、現在は地球環境の観点から必要性が上がっており、分離・回収のコストを削減することが求められており、その点で技術的なブレークスルーが必要です。

CO₂の分離・回収の技術は様々ですが、ここではいくつかの技術を紹介します。

化学吸収法

化学吸収法は、CO₂を選択的に吸収するアミン系の水溶液をCO₂の吸収液として利用して、CO₂を分離・回収する技術です。

化学吸収法は、以下の図のような仕組みです。

化学吸収法によるCO₂の分離・回収

化学吸収法はメリットは、装置が複雑でないため大量のガスを処理可能な点です。そのため、化学吸収法は、高炉や火力発電等の大規模排出源でのCO₂分離・回収に適しています。

化学吸収法のコストは、吸収液の再生に要する熱エネルギーのコストが大半であり、現在CO₂1トン分離・回収するにあたり、2.0~2.5GJ(ギガジュール)の熱エネルギーが必要です。この熱エネルギーとそれに伴うコストを如何に抑えるかが課題であり、今後の技術開発のポイントとなります。

物理吸収法

物理吸収法は、化学吸収法と同様に吸収液を使ってCO₂を分離・回収します。化学吸収法との違いは、化学変化によってCO2を吸収液に吸収するのではなく、物理的にCO₂を吸収液に吸収するという点です。

吸収液は物理的にCO₂を吸収するため、化学変化を起こしてCO₂を吸収した場合と比べ、CO₂を分離するコストが低いことが特徴です。吸収液がCO₂を吸収可能な量は、CO₂分圧(*)に比例します。つまり、CO₂を含むガスのCO₂濃度が高ければ高いほど、単位吸収液あたりのCO₂吸収量が大きくなると言えます。

(*)分圧とは、多数の成分からなる混合気体において、ある1つの成分が混合気体と同じ体積を占めた時の圧力を言います。つまり、混合気体中からある1つの成分だけを取り出した時の圧力のことで、混合気体におけるその成分の濃度に比例します。


つまり、CO₂分圧の高いガスが物理吸収法に適していると言えます。

なお、化学吸収法は、アミン系の吸収液の制約を受けるため、CO₂分圧が高くなったとしてもCO₂吸収量が上がるとは限りません。

化学吸収法と物理吸収法の比較
石炭ガス化プラントにおける CO2 分離回収技術(物理吸収法)より引用

物理吸収法は、メタノールを用いたレクチゾール法(Rectisol)、ポリエチレングリコールのジメチルエーテル溶液を用いたセレクソール法(Selexol)が普及しています。

膜分離法

膜分離法は、CO₂を選択的に透過させる膜を活用し、CO₂を分離・回収する方法です。

膜分離法によるCO₂の分離・回収


CO₂のみを選択的に透過する分離膜は以下のような構造になっており、H₂をはじきます。

分離膜の仕組み
高分子膜によるCO2分離技術「分子ゲート膜」 RITEより引用

化学吸収法や物理吸収法のように吸収液を使わないため、吸収液の再生に必要なエネルギーが不要でコストを抑えやすいのが特徴となります。一方、分離・回収したCO₂の純度を上げることが難しく、今後の技術的課題です。

回収したCO₂の輸送

CO₂は-56.6度まで温度を下げるとドライアイス=固体となります。-56.6度より高い温度になると気体となります。なお、その状態で一定以上の圧力となると液体になります。

回収したCO₂はパイプライン、トラック、船舶などで輸送されますが、輸送手段に応じて固体、液体、気体のどの状態で輸送するかが異なります。

パイプラインで運ぶ場合は気体、トラックで運ぶ場合は液体=液化炭酸ガス、船舶で運ぶ場合は液体、で運びます。


CO₂の分離・回収の事例

日本では、2008年に日本CCS調査株式会社が設立され、2012年より北海道の苫小牧市にてCO₂の分離・回収・貯留までを行った事例が有名です。

苫小牧におけるCCUS大規模実証試験
日本CCS調査株式会社 HPより
2012年度から2015年度の4年間は、供給源となる製油所の水素製造装置から発生するCO2を含むガスから高純度のCO2を分離・回収するための設備と、地下へCO2を圧入するための設備を設計・建設するとともに、既調査井から1坑の観測井への転用、2坑の観測井と2坑の圧入井を掘削しました。

同時に、貯留層へのCO2圧入が周辺環境に影響を与えないことを確認するため、地層や地震に関するデータのモニタリングシステムを設置し、圧入前の基礎データの取得も行いました。また、CO2が貯留される地層が海底下となるため、海洋汚染防止法に基づいた海水・海洋生物などの事前調査も実施しました。

これらの準備期間が終了し、2016年4月より苫小牧沖海底下への圧入を開始しました。2019年度も、累計30万トンの実現に向けて圧入を継続していましたが、2019年11月22日にCO2圧入30万トンを達成した為、11月22日に圧入を停止しました。

モニタリングは、圧入終了後も継続しています。モニタリングでは、圧入したCO2の挙動(移動・広がり)を把握し、微小振動や自然地震を常時観測し、海洋環境調査を通じてCO2の漏出がないことを監視しています。
CCS実証実験全体図
日本CCS調査株式会社 HPより引用

以上、二酸化炭素の分離・回収技術の概要についてまとめました。今後、各技術の進捗状況を掘り下げたり、各事例の詳細をご紹介できればと思います。

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