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世界で3,000兆円の規模となるESG投資とは?
世界で3,000兆円の規模となるESG投資とは?
2021-09-08
加藤 章太朗
ESG
ESG投資

世界各国、世界の企業が2050年のカーボンニュートラルに向けて動き出しています。

CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは

世界各国で多くの企業が脱炭素経営に向けて動き出した1つの理由に、全世界で30兆ドル(約3,300兆円)もの規模になるESG投資があります。ESG投資とは環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資のことです。この記事では、ESG投資について詳しく解説します。

<目次>

・ESG投資とは

・ESG投資7つの手法

・ESG投資の事例


ESG投資とは

ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資のこと。機関投資家の投資の意思決定プロセスに、ESG(E=Environment、S=Social、G=Governance)課題を反映させるべきとした国際的なガイドライン(責任投資原則= PRI)が2006年、国連によって定められました。財務情報に加え、財務以外のESGに関する情報を合わせて投資の決定をするというものです。

ESG投資

2018年にESG投資の残高は30兆ドルとなり、2014年から70%拡大しました(*)。これは、世界全体の投資残高の3割と言われています。

(*)ESG投資を巡る課題より(早稲田大学 経営管理研究科 教授 根本直子)

ESG投資7つの手法

ESG投資の手法は以下の7つに分類されると言われています。

1.ネガティブ・スクリーニング

2.ポジティブ・スクリーニング

3.国際規範スクリーニング

4.ESGインテグレーション

5.サステナビリティ・テーマ投資

6.インパクト・コミュニティ投資

7.エンゲージメント・議決権行使

1.ネガティブ・スクリーニング

ESGの観点から問題があり、ESGに悪い影響をもたらすと考えられる特定のセクターや個別企業をポートフォリオから外す手法です。化石燃料、たばこ、アルコール、武器製造、などが除外セクターとして挙げられることが多いです。

2.ポジティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニングとは逆に、ESGに良い影響をもたらすと考えられる業種や企業に投資をする手法です。ESG指数算出会社が算出したESG格付け指数を用いて、ポートフォリオの構築を行います。

3.国際規範スクリーニング

ESGに関する国際規範に反した企業をポートフォリオから除外する手法です。環境破壊、人権侵害、などの様々な国際規範がありますが、それらに違反していないか投資家が判断します。

4.ESGインテグレーション

財務指標に加え、ESGに関する活動である「非財務指標」も投資判断の材料とする手法です。

5.サステナビリティ・テーマ投資

再生可能エネルギーなどESGの中でも「サステナビリティ」に関連するテーマに投資する手法です。

6.インパクト・コミュニティ投資

投資の結果として、経済的なリターンに加え、社会・環境に良い影響を与えることができたかも重視する手法です。経済的なリターンと社会・環境への好影響のバランスは投資家によって異なります。また、社会・環境への好影響は数値化されることも多いです。

7.エンゲージメント・議決権行使

企業のESGへの取り組みを促進することを目的として、株主総会や経営陣との面談で投資家が企業と対話を行う手法です。企業に対して対話を行いESGへの活動の改善を促しますが、改善が見られない場合、ポートフォリオから外す場合もあります。

ESG投資の事例

BlackRock(ブラックロック)CEOによる投資先企業向けのメッセージ

運用資産額9兆ドル(約990兆円)を超えるとされる世界最大のBlackRockはESG投資の最大の事例と言えます。

BlackRockコーポレートサイト

CEOローレンス・フィンク氏が投資家向けに気候変動リスクへの情報開示や対策を求めています。

コーポレートサイトのメッセージ「金融の根本的な見直し」の要点を抜粋すると以下です。

・気候変動リスクの兆候が顕在化していることにより、投資家は現代金融理論を再検討し始めています。例えば、都市は気候リスクによって地方債市場の前提が変わった場合でもその必要とされるインフラ整備のために資金調達が今まで通りできるのでしょうか?また、現代のとても重要な金融の仕組みである住宅ローンの市場において、もし貸し手が30年という長い期間における気候リスクの影響を正しく予測できない場合、あるいは影響を受ける地域における有効な水害・火災保険市場が存在しない場合、どのようなことが起こるのでしょうか?干ばつや洪水により食品価格が上昇したら、インフレや金利水準はどう変動するのでしょうか?新興国市場の生産性が猛暑などの異常気象の影響で低下した場合、どのようにして経済成長を予測すれば良いのでしょうか?

・こうした問題意識はリスクや資産価値の根本的な見直しを促しています。資本市場は将来のリスクを先取りした形で織り込むため、気候変動そのものよりも早い時期にその資産配分を変更するでしょう。すなわち近い将来、おそらく大半の人々が予想しているより早いタイミングで大規模な資本の再分配が起きるのではないでしょうか。

サステナビリティを弊社の投資方針の中心に据えるためのさまざまな施策を明記しました。具体的には、ポートフォリオ構築とリスク管理における不可欠な要素としてサステナビリティを位置付けること。あるいはサステナビリティ・リスクが高いとされる資産を投資対象から外すこと。

・ステークホルダーへの対応、あるいはサステナビリティ課題に向けた適切な対応を怠る企業や国に対して、いずれ市場は懐疑的な見方をとるようになり、その結果、資本コストは上昇することになります。一方で、透明性を重視し、ステークホルダーに真摯に対応する企業や国は、質が高く忍耐強い資本を含め、より効果的に資本を集めることができます。

・弊社では、こうした情報開示および投資先企業との対話の内容に基づいて、企業がそれぞれの事業に係るリスクを適切に管理・監視し、十分な将来計画を策定しているかどうかを評価したいと考えています。しっかりした情報開示がなければ、弊社やその他の投資家は、その企業が適切なリスク管理を怠っていると結論付けざるを得ないことになりかねません。

・サステナビリティに関連する投資リスクが増大する中、情報開示に関する対話等を通じた従前からの啓発活動を踏まえ、投資先企業がサステナビリティに関連した情報開示、その根本となる事業活動や計画において十分な進展を示せない場合には、経営陣と取締役に対して、反対票を投じることについて、より積極的に検討します。

HSBCによる5,690憶ドル(約62.6兆円)の責任投資

HSBC投信は、ESG要素を投資判断に組み入れる責任投資を行っており、5,690憶ドルの規模となっています。

HSBC投信のコーポレートサイト

ESG投資の手法で分類すると以下の規模の投資を行っています。

・ネガティブ・スクリーニング:44憶ドル

・ポジティブ・スクリーニング、ESGインテグレーション:68憶ドル

・サステナビリティ・テーマ投資:47億ドル

・インパクト投資:6億ドル

※上記は2021年9月時点の規模となります。

野村アセットマネジメントによるESGインテグレーション

CEO中川順子氏のメッセージで、脱炭素社会に向け投資家の観点から貢献していくとしています。そして、以下のようなオペレーションで、ESGインテグレーションを実行していくとされています。

責任投資調査のESGスペシャリストは、運用部のポートフォリオ・マネージャーや企業調査部のアナリストと連携して、投資先企業の温室効果ガス(GHG)排出量やESGスコアのモニタリング、シナリオ分析や移行リスクの分析などによるポートフォリオ管理を行い、投資先企業における気候関連リスク・機会を把握することに努めています。

事務局が取りまとめたGHG排出量やESGスコア、シナリオ分析等の分析データは、ポートフォリオ・マネージャーやアナリストなどと共有され、企業分析やエンゲージメント、投資意思決定に活用されています。また、これらの分析データは定期的に運用調査部門の責任者で構成される責任投資委員会に報告されます。

TCFD 野村アセットマネジメント

日本生命によるすべての投融資へのESG評価の導入

日本生命は、2021年4月よりすべての投融資へESG評価を導入しました。約70兆円の資産を運用する国内最大の機関投資家の動きとして注目されました。

7つの手法のどれに偏ることもなく、バランス良く実行していく姿勢が見られます。

ESG投融資 日本生命コーポレートサイトより

SOMPOホールディングスによるネガティブ・スクリーニング

SOMPOホールディングスは2020年9月に以下のように、石炭火力発電へのネガティブ・スクリーニングの方針を明らかにしました。

すでに保険引受・投融資を行うこと表明している案件除き、日本国内の石炭火力発電所の新規建設に関する保険引受・投融資は原則として行いません。

サステナビリティへの取組強化について SOMPOホールディングス

以上がESG投資の概要となります。地球環境問題への対応を含めたESGに対処することが、企業の資金調達を左右する≒業績や成長を左右する時代となりました。今後もESGの事例などを紹介できればと思います。

ESG投資に関する他の記事は以下を参照ください。

年率59%で成長するESG債とは?脱炭素経営で企業の資金調達が変わる

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