Click here to show popup
年率59%で成長するESG債とは?脱炭素経営で企業の資金調達が変わる
年率59%で成長するESG債とは?脱炭素経営で企業の資金調達が変わる
2021-09-09
加藤 章太朗
ESG
ESG債
グリーンボンド
ソーシャルボンド
サステナビリティボンド

世界各国、世界の企業が2050年のカーボンニュートラルに向けて動き出しています。

※カーボンニュートラルについてはこちらの記事を参照

CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは

世界各国で多くの企業が脱炭素経営に向けて動き出した1つの理由に、全世界で30兆ドル(約3,300兆円)もの規模になるESG投資があります。ESG投資とは環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資のことです。


ESG投資については以下の記事を参照ください。
世界で3,000兆円の規模となるESG投資とは?

今回は、ESG投資の中でも注目されているESG債について解説します。

<目次>

・ESG債とは

・1.グリーンボンド

・2.ソーシャルボンド

・3.サステナビリティボンド

・4.サステナビリティ・リンク・ボンド

・5.トランジションボンド

ESG債とは

ESG債とは、環境改善や社会貢献などに効果のある事業を資金使途とする債券のことです。格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、2021年8月時点でESG債の発行額は前年比59%増の8,500憶ドル(約90兆円)となったとのことです(*)。

(*)21年のESG債発行額、最高の8500億ドルに ムーディーズ 日経新聞より

ESG投資全体の規模(約3,300兆円)からするとまだまだ小規模ですが、著しく成長していると言えます。ESG債は以下5種類が流通しています。

1.グリーンボンド(環境)

2.ソーシャルボンド(社会貢献)

3.サステナビリティボンド(環境、社会貢献)

4.サステナビリティ・リンク・ボンド

5.トランジションボンド

1.グリーンボンド(環境)

グリーンボンドは、地球環境分野に貢献するプロジェクトに使途を限定した債権のことです。具体的には以下のようなプロジェクトが債権の利用使途となります。

・再生再生可能エネルギーの導入

・省エネルギーの実施

・グリーンな製造プロセスの構築

・持続可能な土地管理

・気候変動への対応

・環境汚染の防止

・クリーンな輸送の実現

グリーンボンドを発行する際は、地球環境に貢献するプロジェクトに資金を提供していることを証明するために、Climate Bond Standard Boardなどの第三者機関による検証が行われます。また、グリーンボンドを発行した後は、発行体が資金使途を追跡し、最新情報を報告しなければなりません。

日本のグリーンボンドの規模は以下の推移となっています。

日本のグリーンボンドの発行規模推移
グリーンファイナンスポータル 環境省より作成

グリーンボンドの事例

Zホールディングスのグリーンボンド

発行年限:7年

発行額:200憶円

資金使途:PUE(Power Usage Effectiveness)1.5未満を満たすデータセンターの建設、改修、取得、運営

グリーンボンドの発行条件決定に関するお知らせ Zホールディングス株式会社より

アサヒグループホールディングス株式会社のグリーンボンド

発行年限:5年

発行額:100憶円

資金使途:リサイクル PET の調達、バイオマスプラスチックの調達、再生可能エネルギーの購入、社有林「アサヒの森」の維持 等

グリーンボンド発行に関するお知らせ アサヒグループホールディングス株式会社より


九州旅客鉄道株式会社のグリーンボンド

発行年限:10年

発行総額:100億円(予定)

資金使途:省エネ型車両の導入など

グリーンボンド発行に関するお知らせ 九州旅客鉄道株式会社より

2.ソーシャルボンド(社会貢献)

ソーシャルボンドは、社会的課題を解決するプロジェクトに使途を限定した債権のことです。ソーシャルボンドとして認められるためには、以下の4つの原則に従う必要があります。

<ソーシャルボンドの4原則>

1.資金使途

2.プロジェクトの評価と選定プロセス

3.資金使途の管理

4.報告

1.資金使途

ソーシャルボンドのプロジェクトは、明確に社会的利益をもたらさなければなりません。社会的利益は発行者によって評価され、可能な限り定量化します。

2.プロジェクトの評価と選定プロセス

発行者は、ソーシャルボンドの投資家に以下を明確に伝えなければなりません。

・社会的目標

・プロジェクトが適格な社会的プロジェクトのカテゴリーにどのように適合するかを発行体が決定するプロセス

・プロジェクトに関連する潜在的な社会・環境リスクの除外基準や除外プロセス


3.資金使途の管理

資金使途は適切なプロセスで追跡されなければなりません。

4.報告

発行者は、資金使途に関する最新の情報を、容易に入手できる状態にしておくべきであり、重要な進展があった場合には適時更新しなければなりません。

※上記原則は、Social Bond Principles Voluntary Process Guidelines for Issuing Social Bonds June 2020より

ソーシャルボンドの事例

東京都のソーシャルボンド

発行年限:5年

発行額:300億円

資金使途:中小企業制度融資の預託金、雇用・就業促進施設等の整備、特別支援学校の整備、チャレンジスクールの整備

「東京ソーシャルボンド」の発行について 東京都より

ANAホールディングス株式会社のソーシャルボンド

発行年限:7年

発行額:50億円

資金使途:ウェブサイトの国際標準のW3Cアクセシビリティ・ガイドラインへの適合、お手伝いが必要なお客様用カウンター(ローカウンター)を設置、ラウンジの改修(受付へのローカウンター設置、扉・通路幅の拡大、車いす利用者優先エリアの設定等)、車いす利用者専用駐車場の設置、多機能トイレの導入、など

ANAホールディングスソーシャルボンド ANAホールディングス株式会社より

3.サステナビリティボンド(環境、社会貢献)

地球環境、社会化課題解決双方に貢献するプロジェクトに使途を限定した債券です。日本のサステナビリティボンドの発行規模の推移は以下です。

日本のサステナビリティボンドの発行規模推移
グリーンファイナンスポータル 環境省より作成

サステナビリティボンドの事例

J.フロントリテイリング株式会社のサステナビリティボンド

発行年限:5年

発行額:150憶円

資金使途:・再生可能エネルギー由来電力の購入、LED 照明への切り替え、社用車のEV化、女性の活躍推進への取り組み、など

当社初の「サステナビリティボンド」発行に関するお知らせ J.フロントリテイリング株式会社より

東日本旅客鉄道株式会社のサステナビリティボンド

発行年限:10年

発行額:300憶円

資金使途:交流蓄電池電車の導入など

第1回 サステナビリティボンド 東日本旅客鉄道株式会社より

川崎重工業株式会社のサステナビリティボンド

発行年限:10年

発行額:100億円

資金使途:自動PCR検査ロボットシステム普及に関する事業、クリーン水素サプライチェーン構築に関する事業、など

当社初のサステナビリティボンド発行について 川崎重工業株式会社より

4.サステナビリティ・リンク・ボンド

サステナビリティ・リンク・ボンドとは、発行者があらかじめ定義された持続可能性/ESGに関する目標を達成したかどうかによって、債券の発行条件が変化する債券のことです。例えば、持続可能性/ESGに関する目標を期限までに達成できなければ発行者が投資家に支払う利率が0.1%上昇する、といったような債権のことです。

つまり、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行者は、あらかじめ持続可能性/ESGに関する目標を達成期限と共に約束することになります。サステナビリティ・リンクボンドは、評価指標(KPI)とサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)による将来のパフォーマンス評価に基づいた金融商品です。


なお、サステナビリティ・リンク・ボンドは、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドとは異なり、使途は限定されません。債権関係なく、発行者が決められた期限までに持続可能性/ESGに関する目標を達成できるかがポイントです。

サステナビリティ・リンク・ボンドの事例

ANAホールディングス株式会社のサステナビリティ・リンク・ボンド

発行年限:5年(予定)

発行額:100億円(予定)

<SPTs>
1. DJSI World、及びDJSI Asia Pacificの構成銘柄に選定
2. FTSE4Good Indexの構成銘柄に選定
3. MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄に選定
4. CDP 「A-」以上の評価取得

上記4つのSPTsのうち、2022年度末(2023年3月31日)時点で2項目以上が未達成の場合、環境・社会に対してポジティブなインパクトを創出することを目的として活動を行っている一般に認知された法人・団体等に対して寄付を行い、当社自らのESGへの取り組みに加えて、寄付による活動支援を通じて追加的にポジティブなインパクトを創出します。

「ANAホールディングス サステナビリティ・リンク・ボンド」を発行いたします ANAホールディングスより

株式会社野村総合研究所のサステナビリティ・リンク・ボンド

発行年限:12年(期限前償還条項付)

発行額:50億円

<SPTs>

1.2030年度 NRIグループの温室効果ガス排出量72%削減(2013年度比)
(Scope 1+2)

2.2030年度 データセンターの再生可能エネルギー利用率70%

NRIサステナビリティ・リンク・ボンド 株式会社野村総合研究所より

5.トランジションボンド

トランジションボンドとは、持続可能なビジネスに移行するためのプロジェクトに使途を限定した債権です。発行者のビジネスやプロジェクトが環境関連に分類される必要はありませんが、持続可能なビジネスに移行することを求めます。例えば、火力発電を主体とする電力会社がCO₂を分離・回収・貯蔵するための資金を調達するなどが考えられます。

トランジションボンドの提唱者は、環境関連に分類されない企業がグリーンボンド市場から排除されるよりも、トランジション・ボンドを使って資産を調達する方が良いとしています。

トランジションボンドの事例

日本郵船株式会社のトランジションボンド

発行年限:5年

発行額:100億円

資金使途:洋上風力発電支援船、アンモニア燃料船、水素燃料電池搭載船、LNG燃料船、LNG燃料供給船、LPG燃料船、運航効率化と最適化、など

本邦初、トランジションボンドを発行 日本郵船株式会社より

以上がESG債の概要となります。脱炭素経営をしているかどうか、は今後ますます企業の資金調達に影響を与えそうです。