ESG Ratings(ESG格付け)とは?ESG担当者・IR担当者が理解すべきESG格付けのメカニズム
ESG Ratings(ESG格付け)とは?ESG担当者・IR担当者が理解すべきESG格付けのメカニズム
2021-09-20
加藤 章太朗
ESG格付け
IR
ESG
ESG投資
脱炭素経営

今や全世界で30兆ドル(約3,300兆円)もの規模になるESG投資。ESG投資とは環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資のことです。ESG投資に関する詳しい解説は以下の記事をご参照ください。

世界で3,000兆円の規模となるESG投資とは?

「世界全体の投資残高の3割を占めると言われる規模になったESG投資の資金に、如何にしてアクセスするか?」という問いは、企業の資金調達上の重大なイシューとなっています。

今回は、企業がESG投資を呼び込むために重要なESG Ratings(ESG格付け)について解説します。

<目次>

・投資家にとってのESGリスクとは

・ESG Ratings(ESG格付け)とは

・ESG Ratings(ESG格付け)①:MSCI ESG Ratings

・ESG Ratings(ESG格付け)②:Sustainalytics' ESG Risk Ratings

投資家にとってのESGリスクとは

現在、ESGの視点を入れた投資が世界で30兆ドル(約3,300憶円)と言われていますが、そもそも投資家はなぜESGの観点を投資に取り入れるのでしょうか。

その答えは、ESG(環境、社会、企業統治)のリスクが大きくなり、投資の短期・長期のパフォーマンスに影響を与えることが明らかになってきたからです。例えば、運用資産額9兆ドル(約990兆円)を超えるとされる世界最大のBlackRockは、コーポレートサイトに以下のようなメッセージを掲載し、ESGのEの中に入る気候変動リスクを大きな投資リスクとみなしています。

気候変動は、長期的な企業活動において極めて重要な意味を持つようになりました。昨年9月に何百万人もの人々が気候変動対策を訴えた際、その多くの人々が、気候変動が経済成長と繁栄にいかに深刻かつ持続的な影響を与えるかを強調しました。そしてそのようなリスクは今の所、金融市場に適切には反映されていません。

一方で、こうした気候変動に関するリスク認識は急速に変化しており、今、金融の仕組みは根本から見直される事を余儀なくされていると思います。気候変動リスクの兆候が顕在化していることにより、投資家は現代金融理論を再検討し始めています。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、ブラックロック・インベストメント・インスティテュート(BII)やマッキンゼーなどの様々な機関による分析のおかげで、私たちはこうした気候リスクが自然界の現象と経済成長を支えるグローバルなシステムにどのような影響を今後与えるかについて徐々に理解を深めています。

例えば、都市は気候リスクによって地方債市場の前提が変わった場合でもその必要とされるインフラ整備のために資金調達が今まで通りできるのでしょうか?また、現代のとても重要な金融の仕組みである住宅ローンの市場において、もし貸し手が30年という長い期間における気候リスクの影響を正しく予測できない場合、あるいは影響を受ける地域における有効な水害・火災保険市場が存在しない場合、どのようなことが起こるのでしょうか?干ばつや洪水により食品価格が上昇したら、インフレや金利水準はどう変動するのでしょうか?

新興国市場の生産性が猛暑などの異常気象の影響で低下した場合、どのようにして経済成長を予測すれば良いのでしょうか?投資家はこうした問題について考慮し、気候変動リスクを投資リスクとして認識するようになってきています。

実際、世界各地の弊社のお客様の多くは真っ先に気候変動を話題に取り上げています。欧州であろうがオーストラリアであろうが、南米であろうが中国であろうが、またフロリダであろうがオレゴンであろうが世界中の投資家から、ポートフォリオをどのように見直すべきか、という質問を受けます。こうした投資家は気候変動による直接的な影響のみならず、各国の気候変動に関する政策がどのように世界の物価やコスト、需要にインパクトを与えるのかを理解しようとしているのです。


金融の根本的見直し BlackRockのコーポレートサイトより

ESG Ratings(ESG格付け)とは

それでは、投資家はESGのリスクをどのように避け、投資を実行することができるでしょうか?その際に有効なのがESG Ratigns(ESG格付け)です。ESG Ratings(ESG格付け)とは、投資家がESGに関するリスクと機会を理解し、これらの要因をポートフォリオ構築に組み込むことを支援するための格付けのことを言います。

例えば、電力会社Aが、従来型の発電に重点を置いており、CO₂を大量に排出しているとします。一方で電力会社Bは再生可能エネルギーやCO₂の回収事業への投資を積極的に行っているとします。この場合、同じ業界でありますが、ESGリスクへの取り組みが全く異なることになります。日本政府が脱炭素社会に向けた戦略を発表している背景を鑑みると、上記観点に限れば電力会社AはBに比べてESGリスクが高いと言えます。

また、このケースは同じ電力業界内でのESGリスクの比較となりますが、製造業など他の業界とは抱えているESGリスクが異なります。また、地理的な違いによってもESGリスクは異なります。このように、世界各国の企業のESGリスクを把握することは手間がかかります。投資家がそれぞれでリスク分析を行うことは難しいため、格付け機関が毎年のように多くの企業に対して格付けをし、更新しているのです。

ESG Ratings(ESG格付け)は様々な会社が行っていますが、以下は著名なESG Ratigns(ESG格付け)機関です。

・MSCI

・Sustainalytics

・CDP Scores

・FTSE Russell

・Refinitiv

・Robeco SAM

・Bloomberg

それでは、上記より2社ピックアップして、どのようにESG Ratings(ESG格付け)を行っているか見て見ましょう。

ESG Ratings(ESG格付け)①:MSCI ESG Ratings

MSCI ESG Ratingsを提供している、MSCIは、アメリカの金融サービス企業で、株価指数の算出などのサービスを提供している会社です。MSCI ESG Ratingsとは、長期的な業界特有の環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクに対する企業の耐性を測るもので、格付けは以下のように行われます。

MSCI ESG Ratingsの概要
MSCIコーポレートサイトを参照し作成

基本的には、企業が所属する業界がどのようなESGリスクを抱えているかを分析し、そのリスクを各企業がどの程度管理できているか?ということを評価します。毎年業界ごとに35の重要課題が設定されるので、その課題に関して管理できているか?を0~10点で評価します。以下は、ソフトドリンク産業の重要課題の例です。

MSCI ESG Ratings 35の重要課題 ソフトドリンク産業の事例
MSCIコーポレートサイトを参照し作成

ESGそれぞれの課題が分解・整理されています。環境(E)は、気候変動、自然資本、汚染、環境機会に分解され、それぞれの領域で具体的なESG課題が設定されています。社会(S)は、人的資本、製造物責任、ステークホルダーの反対、社会的機会、です。統治(G)は、コーポレートガバナンス、企業行動です。そして、業界によってこれらの中でも課題の大きさは異なるため、ESG課題は重み付けされます。ソフトドリンク産業であれば、枠が点線の課題が重要課題として設定されています。なお、これらの課題は毎年見直しがなされます。

重み付けされた各課題を、適切に管理できているか?という評価がなされ、スコアがつけられた後、スコアを加重平均してレーティングとします。レートは、リーダー(AAA、AA)、アベレージ(A、BBB、BB)、ラガード(B、CCC)の順となっています。

MSCIの格付けはMSCIのコーポレートサイトで公開されています。試しにESG格付けが高いと評判のソニー株式会社の格付けを見て見ましょう。検索欄に会社名を入れます。

MSCIのESG Ratings Corporate Search Tool
MSCIコーポレートサイトより

すると、以下のようにすぐに格付けが表示されます。

MSCIのESG Ratings Corporate Search Tool
MSCIコーポレートサイトより

※上記は2021年9月時点の結果となります。

なお、MSCIで2021年9月時点でAAAにランク付けされている日本企業を抜粋します。

・アズビル株式会社

・イビデン株式会社

・オムロン株式会社

・国際石油開発帝石株式会社(株式会社INPEX)

・住友化学株式会社

・ソニー株式会社

ESG Ratings(ESG格付け)②:Sustainalytics' ESG Risk Ratings

Sustainalyticsは、上場企業のESGに基づいて、持続可能性を評価する企業です。SustainalyticsのESG Ratings(ESG格付け)は、企業が所属する業界が持つ重要なESGリスクを適切に管理できているか?を評価します。1,300以上のデータポイントと300以上のデータポイントに裏打ちされた20の重要なESG課題に関して、企業の評価を行います。ESGリスクの評価は、無視できるレベル(0~10)、低いレベル(10~20)、中程度のレベル(20~30)、高いレベル(30~40)、深刻なレベル(40以上)の5つのリスクレベルに分類されます。

では、Sustainalyticsで再度ソニー株式会社の格付けを見て見ましょう。以下のようにコーポレートサイトで会社名を検索窓に入力します。

Sustainalytics ESG Risk Ratings Search a company's ESG Risk Rating
Sustainalyticsのコーポレートサイトより

すると、ESGリスクはLowと表示されます。

Sustainalytics ESG Risk Ratings Search a company's ESG Risk Rating
Sustainalyticsのコーポレートサイトより

同じ業界の他社との比較も出ます。業界の198社中15位にランク付けづけられています。

Sustainalytics ESG Risk Ratings Search a company's ESG Risk Rating
Sustainalyticsのコーポレートサイトより

以上、ESG Ratings(ESG格付け)の概要となります。

様々な格付けがありますが、重要なことは自社が所属している業界のESGリスクを把握し、そのリスクを適切に管理することです。そして、ESGリスクを適切に管理できているかをモニタリングし、ステークホルダーに十分な情報公開をすることが求められています。

ESG Ratings(ESG格付け)を上げることは、資金調達にとって重要です。ぜひ格付け機関のロジックを理解し、自社のESG活動やIRに活かしてみてください。

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